
こんばんは。苫小牧市のありのみ行政書士事務所です。
今年1年を振り返ってみると、法人が法人の取締役から不動産を買い取る利益相反取引に関する相談とその不動産売買の契約書作成・取締役会(株主総会)議事録作成業務が何故か多かったです。
法人が、自社の取締役(個人)から不動産を購入するケースは、オーナー企業ではよく見られます。
例えば、
- 取締役が個人で所有していた土地・建物を会社で使うことになった
- 相続や事業承継の一環として法人に集約したい
- 個人から法人へ資産を移したい
といった事情です。
しかし、取締役が自分の所有物を自分の会社に売る行為は、取締役が自分に有利な価格(不当に高い価格など)を設定し、会社に損害を与えるリスクがあります。そのため、会社法の定めに従った承認手続きが必要となります。
取締役会設置会社の場合は、 取締役会での承認決議が、
取締役会非設置会社の場合は、 株主総会での承認決議が必要となります。
この決議の際は、取引の当事者である「特別利害関係取締役」は、公正さを保つため議決権を行使できません。
売買するものが不動産の場合、法務局での登記の際には取締役会議事録(株主総会議事録)の提出も必要ですし、
議事録には出席した取締役の実印で押印と印鑑証明書が必要となります(普段の議事録は三文判で大丈夫ですし、押印レスの会社も増えてきたのではないでしょうか)。
また、税務上、最もトラブルになりやすいのが「いくらで売買するか」です。
時価より高く買うと、差額分が取締役への「役員賞与」とみなされ、会社側で経費(損金)に算入できず、取締役側には所得税がかかりますし、
時価より安く買うと、差額分が「受贈益(プレゼントをもらった利益)」として会社に法人税がかかりますので、
不動産の場合は、不動産鑑定士による鑑定評価書を取得するか、複数の不動産会社による査定書を保管するなど、「客観的な時価」を証明できるようにしておくことが重要です。
今年私が体験したケースでは、
①法人で所有している土地に隣り合っている土地を取締役個人が所有しており、その土地を等価交換したい。面積は法人で所有している土地の方がわずかに広いが、資産価値はほとんど変わらない。
この法人は、取締役会設置会社なのですが、取締役同士が不仲というしょうもない状態で(笑)、
取締役会で決議したくないからなんとかならないかという相談でした(笑)
登記をお願いしていた司法書士の先生にも相談したところ、
正規の招集手続きを得た上で取締役会が開催されて、不仲の取締役が不参加でも、過半数の原理で承認されたのであれば問題はないけれど、正規の招集手続きを得ていないなら。。。(そりゃそうですよねー)
法人が所有している土地の方がわずかに広いので、その分を現金で支払って購入する場合は利益相反にならずに取締役会決議が不要にならないかも聞かれたのですが、
やはり司法書士から、法務局がその現金で払った分の金額が適正ではないと判断したら利益相反になってしまいますから…と(そりゃそうですよねー)。
というわけで、真っ当な方法で真っ当な決議を得て、不動産の等価交換をしたのでした。。。
②住宅ローンが残っている自宅を法人に買い取ってもらって、別の家に引っ越しをしたいという相談。
この相談で問題になったのが、
・住宅ローンの残債分より不動産の評価額が低い
ことでした。
先ほど説明したように、住宅ローン残高と不動産の価値が乖離しているときに、住宅ローンの残債分に合わせて不動産評価額より高い金額で買い取ると、差額分が取締役への「役員賞与」とみなされてしまい、会社側は経費(損金)に算入できませんし、取締役側には所得税がかかります。
住宅ローン差額を取締役が現金持ち出しで支払って、不動産評価額で法人が買い取る?
でも、買い取ったところで使い道は…?
はてーさてーどうしようか、と思っていたのですが、
結局キャッシュで住宅ローンの残債を完済して、新居へ引っ越していかれました。
なんだよ、金持ってんジャンwwさすが社長ww
③不動産取引は関係ないのですが、
社長と配偶者の二人で取締役を務めている法人で、配偶者を取締役から外したいという相談もありました。
すわ、離婚か!?と焦ったのですが、その配偶者さんがインフルエンサーでもあるので
(こんな地方都市にこんなにSNSフォロワー数のいる人がいるのか!?と驚いたくらいです。ちょっとした芸能人よりフォロワー数が多い。)
配偶者さんを役員にして役員報酬を払うよりは、利益相反取引にならないように役員から外して、
外部委託で広告宣伝してもらう方が有利という判断だったようです。
ちなみに、役員を辞任するときは辞任届だけで、株主総会や取締役会の議決は不要です。
今年は苫小牧市内の金融機関でも利益相反取引が話題になりましたが、
個人と法人が別人格であり、どちらかが得をしたり、損をさせたりという関係ではいけないということは肝に銘じておきたいものです。
俺のものは俺のもの。
