
こんばんは。苫小牧市のありのみ行政書士事務所です。
以前ブログに書いていた映画「敵」を観てまいりました。有言実行でそば処松葉で大福そばも食べてきました。



蕎麦屋さんが大福も作っているので蕎麦と一緒に大福を食べられるという、ちょっと変わったお店です。
もちろん蕎麦も美味しいのですが、大福がとっても美味しいお店なので、豆大福もお持ち帰りしてきました。
さて、映画「敵」ですが、あらすじとしては
77歳の渡辺儀助(長塚京三)は大学教授の職を辞し、妻の信子(黒沢あすか)に先立たれ、祖父の代から受け継いだ日本家屋で平穏な日々を送っていました。 毎朝決まった時間に起床し、朝食を作り、衣類や文房具を丁寧に取り扱う。ときおり気の置けないわずかな友人と酒を酌み交わし、教え子を招いてディナーを振る舞う。そんな生活スタイルが今の預貯金でいつまで続けられるか計算しながら、日々は穏やかに過ぎていきます。 しかしあるとき、そんな彼のもとに「敵がやってくる」という不穏なメールが送られてきて……。
というもの。筒井康隆さんの原作は未読です。
以下、若干ネタバレもありの感想です。
・全編モノクロの映像に映える長塚京三(79歳)。渋い。そして、正統派美人で色気漂う教え子役の 瀧内公美 さん、大学で仏文学を学ぶ河合優実さんのサブカル女子っぽい雰囲気、いつまでも忘れられない亡き妻役の黒沢あすかさんの良い意味で美人じゃない感じとか、ジメジメとした色気がリアルで、キャスティングの妙。三人ともタイプが違う女性なのも素晴らしい。
忘れられない妻って、なんというか美人とか、献身的とかそういうのじゃないんだよね。
・あれ、孤独のグルメを観ているんだっけ?と思うほど、食事シーンの多い1時間50分。孤独のグルメ以上に食事回数の多い映画で腹が…減った…。最初は丁寧に自炊しているのに、後半はカップ麺など食事が雑になるのもリアル。
・認知症という言葉を使わずに、認知症を表現し、観客を混乱させる映画(褒めてる)。まぁ、最初の段階でも、元教え子の訪問日を忘れていたり、九州土産を受け取って「どこに行ってたんだっけ?」とかの会話もあったので、さりげなく老いを描いてはいるんだけど。あんなにしっかり食事を取り、歯を磨き、パソコンを使う知的インテリでも認知症症状が現れ、認知症は誰でも発症しうる病だと感じさせる。
・年を取ってお金を騙し取られると、自分を正当化して納得しているつもりでも、自分を責めて老いが加速するよね。
・主人公は自分の資金が尽きる時が寿命だと思っている(自害するつもりでいる)。周りが行政の助けもあることなどを提案しても「収入もない、税金も納めていない人に国も長生きしてほしいと思っていないでしょう」と。(個人的にはその考えに共感する部分もあるけれど)変に頑固になられると適切な福祉に結びつけるのが難しくなるし、年を取って柔軟に生きることは難しいとも思いつつ、長生きすることのリスクも考えるよね。自分の資金と健康と判断能力があるうちに死ぬというのは幸せなことなのかもしれない。
・妻も子供も兄弟もいないので、相続人がいとこの子どもという結構な遠縁の人に対して遺書を残す。しかもその遺書の内容が若干重たい…。相続人も相談なしで書かれたら相当迷惑だろうな…と(笑)
・認知症の映画だと思って観てみると、古い日本家屋とは言え東京の一等地で一人で暮らし、妻も子供も兄弟もいない老人宅に定期的に来る大学の教え子たちの目的は善意なのか、それとも養子縁組などして資産を狙っているのか、と思ったりすると見方が変わる(笑)。原稿を依頼していた元教え子の編集者も、本当に紙面リニューアルでの打ち切りだったのか、認知症で原稿の内容があまりにも酷いもので遠回しに打ち切りを提案したのか、どちらだったのかなーと。
・年を取るとお風呂入るのも億劫だよね。そりゃ石鹸も余りますわ。むしろ、加齢臭するから使えよというお中元だったのか…。遠回しな嫌味だったのか…。
・講演料は頑なに値下げしない長塚京三…。一度値下げに応じたらその金額でも良くなってしまう、と。でも、何か経営していく上では大事な感覚。
・カトウシンスケさんの食事シーンも面白かったけれど、個人的に一番面白かったのはフン問題を疑われる犬の名前が「バルザック」だったことかな。
・何もないところにありありと現実のものとして人、動物、虫などが見える幻視はレビー小体型認知症に特有の認知症症状。物の中に人の顔や動物の姿が見えてしまう現象のことは「パレイドリア」。
・後期高齢者の性問題も取り扱い、長塚京三になんてこと言わせてんねんというセリフもあるけれど、
82歳の認知症の夫殺害で執行猶予判決…和歌山地裁、被告の立場に理解示す:地域ニュース : 読売新聞
認知症の患者には、性的脱抑制の症状が見られる人もいるし、この事件も認知症の旦那さんが一日に何度も性的行為を求めてきて、疲れてしまった妻が鬱になって夫を殺害しているし、家庭内の性的な問題だったので、誰にも相談できない状態だったようなので、後期高齢者であっても体力があれば性の問題も付きまとうわな、と。
・敵とは誰なのか、何なのか。老い、認知症を敵と捉えるのであれば、誰もが敵と隣り合わせ。
映画「敵」はシネマトーラスにて2月14日まで公開中。
認知症世界の歩き方の筧裕介さんは苫小牧でも生活されたことのある方です。
私の当面の敵は冬の寒さと除雪です。