こんばんは。苫小牧市のありのみ行政書士事務所です。
昨日に続いて、株主総会議事録の話です。
株主総会議事録には、会社法で決められている内容を書かなくてはいけないのですが、
一人社長の会社だったり、同族会社だと、「会社法規定に定められた特定の意見・発言内容」は、
- 決算承認
- 役員改選
- 役員給与・賞与
くらいかと思いますし、株主総会議事録に記載する内容というのは大体決まっているのですが、
一文一文についてはルールがなく、記載内容に間違いがなく、伝わればいいとはいえ、
さすがに報酬をもらって議事録作成する以上は気を遣うわけですよね。
例えば、採決の結果に関する記載は、
- 満場一致で承認可決した
- 全会一致で可決した
など、同じ内容の言葉が同じ議事録の中でバラバラに入っていると散漫としますし、
もし、可決はされたけれど、反対する株主がいたのであれば、
- 賛成多数をもって可決した
- 圧倒的多数の賛成をもって可決した
などの記載方法もありますが、特別決議が加重されている採決の場合であれば、
- 3分の2以上の賛成をもって可決した
などのように、要件を満たしたことを明確にする必要があります。
今回、私が株主総会議事録を作成するときに表現に迷ったのが、
使用人兼務役員から通常の役員になることをどのように表現するか、でした。
ちなみに、使用人兼務役員とは、株主総会で取締役として選任されているものの、
従業員としての籍と職責を引き続き担い、かつ、常時使用人としての職務に従事する者のことです。
使用人としての雇用関係がありますので、通常の役員と異なり、雇用保険に加入することが出来ますし、賞与の金額も定めがありません。
ただし、法人税法上、次のような役員は、使用人兼務役員となりません。また、同族会社の使用人のうち税務上みなし役員とされる者も使用人兼務役員となりません。
使用人兼務役員になれない役員の範囲
- 1 代表取締役、代表執行役、代表理事および清算人
- 2 副社長、専務、常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員
- 3 合名会社、合資会社および合同会社の業務執行社員
- 4 取締役(委員会設置会社の取締役に限ります。)、会計参与および監査役ならびに監事
- 5 上記1から4までのほか、同族会社の役員のうち所有割合によって判定した結果、次のすべての要件を満たす役員
個人的には使用人兼務役員というのが、一番美味しいポジションだと思っていて、使用人から役員になることは昇格なの?と思ったりするのですが、
No.5203 使用人が役員へ昇格したとき又は役員が分掌変更したときの退職金|国税庁 (nta.go.jp)
一応昇格なのかな?
昇進と昇格もニュアンスが違って、「昇進」は社内で役職が上がることを、「昇格」は等級が上がることを指すそうで、「昇格」しても役職が変わらないこともあるらしい。ビジネス用語、ムズカシイヨ。
ちなみに、分掌変更とは、従業員が企業内で別の部署や役職に移動することを指していて、一応昇格で使ってもいいらしいのですが、個人的には代表取締役から取締役になったり、常勤役員が非常勤になったり、取締役が監査役になったりとどちらかと言えば業務範囲は縮小していくイメージなのですが、どうなんですかね?
なので、使用人兼務役員から役員へ分掌変更する、と記載するのはやめました。
また、役員になるという表現も、使用人兼務役員は取締役でもあるのだからすでに役員だし、
ただの役員になる?通常の役員になる?役員に専念する??などと、頭の中をグルグルして
「使用人兼務役員の使用人職務の委嘱を解き、職制上の地位を有する役員へ昇格」
という表現にしてみました。
他にも、
- 議長は、使用人兼務役員A氏を役員専任とすることを提案し、出席者全員の賛成を得た。
- 使用人兼務役員の職務を解き、役員専任としての職務に就くことが決定された。
などの表現でも良いかと思います。日本語ムズカシイヨ。
色々な行政書士や司法書士が作る議事録を見ることがありますが、堅苦しい中にも意外とその先生の個性が出たりして面白く、奥深い議事録作成…。
なお、作成した株主総会議事録に押印する会社法上の義務はありませんが、通常、代表取締役は会社の代表印を使用して、他の取締役等については認印で押印することが多いです。
議事録作成に3週間もかかったわけではありません(笑)